SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……うっ、」


「 まるで英雄気取りだったな。知ってたか? この数日、お前らはふるいにかけられてたんだぜ? 」


「……何の、こと……」


「 それはぁ~、グヒヒッ! ボクたちの余興の為さ。 それと"みせしめ"かなあ? 」


コブがお姉ちゃんに顔を近づける。

そばかすだらけの顔を歪め、グヒグヒと不気味に笑いだした。


「 集団じゃあ、必ず全体を率いようとする奴が出てくる。困難な状況下ほど、そいつが唯一の希望となり、光となる。

……オレたちは待っていたのさ。

未来が絶望に変わる決定的瞬間を見る為に! お前らの希望をくじく為になぁ!」


——ズザッ!

お姉ちゃんが投げられる。


「グヒヒ。小さな世界の夢物語は終わりだよ。お前らにあるのは絶対的絶望のみ!」

——ヒュッ!

コブが両手を振り上げる。

するとグニャリと空間が歪み、V字型の白い何かが群れを成し、お姉ちゃんに襲いかかった。


"シャアアアア——ッッ!!"


それは空気の刃だった。

たくさんの小さな刃がお姉ちゃんの制服をズタズタに切り裂いてゆく……


「 きゃあああ~っ!!」


逃げ回るも、お姉ちゃんの露出した肌からは赤い鮮血が滲み出た。


( お姉ちゃんっ! お姉ちゃんっ! )


目だけがその動きをピタリと追う。


(……いやだ! お姉ちゃん! 逃げて逃げて逃げて逃げてっ……!)


——ガン!

心の声は届かず、お姉ちゃんは固いコンクリート壁へと追い詰められた。
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