SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……でもコレは “ どっちかが欠けた状態 ” ってのが前提ダナ。 ミクはどっちも好調な時と、どっちも不調な時があんだろ? そん時はこの法則は当てはまらねえ。今まで気付けなかったのはソレがあったせいだな 」
「……ふ~ん、」
「普段はどっちが不調でもメンタルには影響ねえみたいだけどな? 満月の夜だとそうもいかねえ……
知ってるかぁ? 満月の夜は犯罪件数だって増加すんだぜぇ?
やっぱ満月には、人のココロに作用する特別な力が働くんだろうなぁ……」
アゴに触れながら黒木はふわっと遠くを見た。
「心に作用する特別な力……」
その言葉が耳を過ぎ、あたしの胸へと落ちてゆく……
満月に試されているような、見透かされているような、なんとも言えない気分になった。
「……とまあ、コレがオレの気付いた満月の異変の法則だ。 途中の説明は、あとで補足した一樹の受け売りなんだけどな~?」
黒木はボスッと隣に座る。
急にゲッソリとした顔になった。
……?
「黒木。 頭、大きくなってるけど」
あたしは横目で黒木を見る。
黒木のアフロは何故か倍にふくらんでいた。
「オ~ウ、アタマ使うといつもこうだ。また脳にエネルギー送り込まね~と……」
黒木はテーブルの上のお菓子をもぐもぐ食べた。
「…………」
あたしもチョコをパクッと食べる。
やっぱり味はイマイチだった。
「なあ~ミクう~?」
スルメを噛みちぎりながら黒木があたしを見つめてる。
「最近、なんか変じゃなかったかぁ?」
「……?」
「ヒーラーにはよぉ、分かるんだぜぇ? 体の悪いトコが黒ずんで見えるんだ」
「……そうなの?」
「オウ。 ……ただ、ミクの場合、なんかこう灰色ってゆーか、体全体が淀んで見えてたんだ、あの日から」
「……あの日?」