SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……でもコレは “ どっちかが欠けた状態 ” ってのが前提ダナ。 ミクはどっちも好調な時と、どっちも不調な時があんだろ? そん時はこの法則は当てはまらねえ。今まで気付けなかったのはソレがあったせいだな 」


「……ふ~ん、」


「普段はどっちが不調でもメンタルには影響ねえみたいだけどな? 満月の夜だとそうもいかねえ……

知ってるかぁ? 満月の夜は犯罪件数だって増加すんだぜぇ?

やっぱ満月には、人のココロに作用する特別な力が働くんだろうなぁ……」


アゴに触れながら黒木はふわっと遠くを見た。



「心に作用する特別な力……」


その言葉が耳を過ぎ、あたしの胸へと落ちてゆく……

満月に試されているような、見透かされているような、なんとも言えない気分になった。



「……とまあ、コレがオレの気付いた満月の異変の法則だ。 途中の説明は、あとで補足した一樹の受け売りなんだけどな~?」


黒木はボスッと隣に座る。

急にゲッソリとした顔になった。


……?


「黒木。 頭、大きくなってるけど」


あたしは横目で黒木を見る。

黒木のアフロは何故か倍にふくらんでいた。


「オ~ウ、アタマ使うといつもこうだ。また脳にエネルギー送り込まね~と……」


黒木はテーブルの上のお菓子をもぐもぐ食べた。


「…………」


あたしもチョコをパクッと食べる。

やっぱり味はイマイチだった。


「なあ~ミクう~?」


スルメを噛みちぎりながら黒木があたしを見つめてる。


「最近、なんか変じゃなかったかぁ?」


「……?」


「ヒーラーにはよぉ、分かるんだぜぇ? 体の悪いトコが黒ずんで見えるんだ」


「……そうなの?」


「オウ。 ……ただ、ミクの場合、なんかこう灰色ってゆーか、体全体が淀んで見えてたんだ、あの日から」


「……あの日?」
< 258 / 795 >

この作品をシェア

pagetop