SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「ミクが天狗サマ呼び出したあの後からだ。 気になってはいたが、病気っつーワケでもねえし……静かに見守ってたんだけどな?
けど、同じようなの、前にもあったの思い出してヨオ。 そのこと一樹に言ったら、アイツいきなり血相変えて “ 今日は危ない ” なんてゆ~から、みんな慌てて飛んで来たんだ……」
「……どういう事?」
「前にその灰色見たのは、ミクが悲しい感情を取り戻した日だ。 あん時は、ミクが初めてしるしに呼ばれた日でもあったよな?」
「……うん、」
「んで今回、天狗サマを呼び出した時、ミクはぶっ倒れるまで力を使った……。 どっちも、体がショック状態だったんだ」
「……ショック?」
「初めてしるしの力を使った事のショックとぉ、しるしの力の使い過ぎによるショック」
「……あ、」
「きっと内側からのサポートがすごく弱くなってたんだな……。それじゃ~ますますマイナスに引っぱられる。 一樹はすぐにソレに気付いた。 あの時みて~にミクに何か感情が戻るってヨオ」
「……そう、だったんだ……」
「案の定だったもんなぁ~。まったく、アイツの洞察力はたいしたモンだぜ」
黒木はハハッと小さく笑う。
そしてしばらく口を閉ざした……
「……黒木?」
あたしは動かなくなった黒木に声をかける。
「ねえ、どうした黒木……」
「オレよお~、」
目線を下にさげたまま、黒木が口を動かした。
「オレ、ミクを苦しめたBlue dollを許さねえ。もういねえとか、壊滅したとか関係なくだ。
力で世の中、牛耳るとか、能力で人を傷付け殺害して……
オレは絶対許さねえ! Blue dollを! そして、ヤツらみてえな意思のヤカラをなっ!」
「……黒木……」
「今日のミクを見てよぉ、これまで以上に強く思ったぜ。一樹もユリも思いは一緒だ」
やっと黒木がこちらを見る。
その顔は、普段の黒木とは全く違う、とても真剣なものだった。