SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……まあ、アレでも一応仲間だしな。アイツにも同じ数珠くれてやるかぁ~。魔物に効くかどーかは知らね~けどな?」
黒木はガパオを一気にかきこんだ。
「…………」
……ヒロカズか。
あたしは何故かそいつに嫌われている。
D.S.Pにいた時、ハッキリ面と向かってそう言われた。
……まあ、別にいいけど。
あたしは転がっていたハンドグリッパーを広いあげ、握力トレーニングを開始する。
「 ダア~ッ!」
すぐに黒木が器具を奪った。
「ミクう~、そんなに体鍛えたらゴリゴリボディになっちまうぜえ? せっかく神に与えられし美しきボディがヨオ~ 」
「……?」
「D.S.Pの女どもを見てみろ! ……たく、どいつもこいつもバッキバッキでヨオ~! ゴツイったらありゃしねえ~」
黒木はハア~とため息をつく。
すると、
「……悪かったわね? ゴッツくて」
「……へ?」
いつの間にそこにいたのか、ユリが後ろに立っていた。
「もう! ひどいじゃないっ! なんて事ゆーのよ誠さんっ!!」
一気に鬼の形相になったユリがソファを持ち上げ黒木に投げる。
「なによ! 私の事、マッチョなオトコ女だと思ってたわけ⁉︎ 信じらんないっ!!」
"ブン! ブン! ……バゴ!"
リビング中のソファーが全部黒木に飛んでいく。
「ヒイ~ッ! 落ち着けユリ! おまえがマッチョな訳ねえだろ~っ!!」
「さっきそう言ったじゃない! この毛ダルマ!」
「誤解だあ~! 話せばワカル~!!」
……?
リビングでは、プチ戦闘が始まった。