SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「湧人も熱だよ」


「……ハァ、」


湧人がふっと目を閉じる。


「……湧人⁉︎」


「……うっ、」


「……湧人⁉︎ 大丈夫⁉︎」


「……うう……」


湧人はうなるばかりだった。


……えっと……


取り合えず、ベッドに寝かせないと……

あたしは湧人を背中に乗せる。

途中つまずきながら、なんとか二階の部屋まで湧人を運ぶ……


「……よい、しょ……」


……ふう、


やっとベッドに湧人を寝かせて一息ついた。


……あつい。


二階はかなりモワッとしていた。

あたしはピ! と冷房をつける。すると、


「……はぁ、……みず……」


かぼそい声が耳に届く。


「……水? 水なの湧人?」


「……み、ず……」


「わかった」


あたしは急いで下へとおりた。


「ゲホ! ……ゲ~ホゲホッ!!」


……⁉︎

下へ行くと苦しそうな声に意識が取られた。


「お婆ちゃん!」


急いで駆け寄りお婆ちゃんの背中をさする……


「ゲホ! ……ゼエ~、ハァ、」


「お婆ちゃん! 大丈夫⁉︎」


「……みーちゃん……」


やっと咳がおさまったお婆ちゃんはそれだけ言って目を閉じた。


「…………」


念のため、息をしてるか確認する。


……よかった。

吐く息は熱いけど、お婆ちゃんは無事だった。
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