SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……ゆうと……」
あたしは赤い顔の湧人を見つめる。
どうしよう。 あたし、なんにも分からない。
こんな時、どうすれば……
……! そうだ、ユリ……
ポケットから電話のやつを取り出して、ユリの番号にかけてみる。
前に黒木が外出中、熱を出したあたしをユリが看病してくれた。
——ピピ、
「……もしもしユリ?」
『もう起きてたの美空⁉︎ ごめんっ、今すごいバタバタしてて……急な仕事で2、3日帰れそうにないの! 悪いけど……プツ!』
周りの雑音に紛れ、電話はそこで切れてしまった。
「…………」
……はぁ~。
あたしは再び下へとおりる。
「……コホ!」
小さく咳をするお婆ちゃんの布団を直し、ペタンと床に座りこむ……
……風邪? ……熱? ……看病??
そんなのマニュアルにはなかったし、学校でもまだ習ってない。
……どうしよう。 ……誰か……
思わずぐるりと部屋を見回す。
……?
額ぶちの、写真の人物と目が合った。
「…………」
脳裏に浮かぶある光景……
……! そうか! よし!
思い付いて、あたしは素早く立ちあがった。