SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

————お盆。


それはご先祖様があの世から帰ってきて、家族と一緒に楽しいひとときを過ごし、また帰っていくという行事。


ちょっとだけ苦手なこの8月。

だけど今は感謝する。

この、お盆という風習があることに。



——シュ!


線香の束に火をつける。

少し振って煙を部屋に行き渡らせる……

立ちこめるビャクダンの香り……

あたしは仏壇の前で手を合わせ、


「ご先祖さま! 帰ってきて!」


声に出して呼びかけてみた。


——シン……


だけど何も反応はない。


……う〜ん、


やっぱりこれだけじゃムリか。
本当はお盆まであと二日あるし。


「…………」


また思い浮かぶ光景……

前にテレビで見たのだ。

“ 霊媒師 ” とやらが、あの世から死んだ人間を呼び寄せるのを。

霊媒師だって人並み外れた第六感の持ち主。

だったらあたしにも出来ない事はないと思う。

少なくとも、この “ お盆 ” という時期を利用すれば……


"……ジジジ……"


ESPのセンサーをONにする。

頭の中を開く感覚で意識をスーッと高めていく……


——ファアア……


空と地上を繋ぐ一本の光が、イメージとして頭の中に入ってきて……


"……ジジジジジ……!"


ESPの力を全開に、あたしは光とプラグをガッチリ繋ぐ……


——サアア~……


風に流れる線香の煙……


「 ! 」


————来た!


“……ザワザワ……”


振り向くと、たくさんの霊がそこにいた。
< 273 / 795 >

この作品をシェア

pagetop