SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
————お盆。
それはご先祖様があの世から帰ってきて、家族と一緒に楽しいひとときを過ごし、また帰っていくという行事。
ちょっとだけ苦手なこの8月。
だけど今は感謝する。
この、お盆という風習があることに。
——シュ!
線香の束に火をつける。
少し振って煙を部屋に行き渡らせる……
立ちこめるビャクダンの香り……
あたしは仏壇の前で手を合わせ、
「ご先祖さま! 帰ってきて!」
声に出して呼びかけてみた。
——シン……
だけど何も反応はない。
……う〜ん、
やっぱりこれだけじゃムリか。
本当はお盆まであと二日あるし。
「…………」
また思い浮かぶ光景……
前にテレビで見たのだ。
“ 霊媒師 ” とやらが、あの世から死んだ人間を呼び寄せるのを。
霊媒師だって人並み外れた第六感の持ち主。
だったらあたしにも出来ない事はないと思う。
少なくとも、この “ お盆 ” という時期を利用すれば……
"……ジジジ……"
ESPのセンサーをONにする。
頭の中を開く感覚で意識をスーッと高めていく……
——ファアア……
空と地上を繋ぐ一本の光が、イメージとして頭の中に入ってきて……
"……ジジジジジ……!"
ESPの力を全開に、あたしは光とプラグをガッチリ繋ぐ……
——サアア~……
風に流れる線香の煙……
「 ! 」
————来た!
“……ザワザワ……”
振り向くと、たくさんの霊がそこにいた。