SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


……やった。 ……成功。


着物を着たお爺ちゃんお婆ちゃん、おじさんおばさん、少年少女、小さな子供まで……

とにかくたくさんの霊で部屋はごった返していた。


「ご先祖さま!」


あたしは急いで霊たちに近づく。

ところが、


『……おぬし! 一体何の真似ぞ!』
『バカモノ! こっちゃ来るでねえ!』
『何のつもりか! 嫌がらせかえ~!』
『キャア~! やめて〜近付かないで!』


何故か霊たちが逃げまどう……


「待って、ご先祖さま!」


『おまえなぞ知らん! 誰ぞ!』
『何故にこんな仕打ちをする!』
『何の怨みがあるか! 申せ!』


追いかけるあたしに、霊たちはそんな事を言ってくる。


「……なんのこと?」


訳が分からずピタッとあたしは立ち止まる。


『すっとぼけるか! このおなご!』
『その黒い玉ころぞ!』
『強烈すぎてかなわんわ!』


霊たちはあたしの数珠を指差した。


「……あ、」


……そうかそうか、そうだった……


あたしは急いで数珠を外し、バッグの奥へとそれをしまう。


『『『……ふぅ~…… 』』』


途端に、霊たちはやっと落ちついた。


『……で、おぬし誰ぞ?』


さっきの態度から一変、霊たちはあたしを取り囲む。


「助けて!」


名前を言うより先にあたしは霊たちに助けを求めた。


「湧人とお婆ちゃんが大変なの! 熱があって!」


『熱? おお、それは心配じゃ』


「看病ってどうやるの? あたし二人に何もしてない! 苦しんでるのに!」


『……何も……』
『……してない……』

『『……何もしてないー⁉︎』』


慌てたようにワ~ッとみんなが動き出す。


『おぬし! それはどういう事か!』
『大変じゃ! ワシらの子孫が!!』

『とにかく冷やせ!』
『水じゃ! 氷じゃ!』
『おなご! はよう薬を!』


「……わかった!」


言われるがままに、あたしは動いた。
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