SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

——それから夜通し看病は続き……


"……チュンチュン……"


新しい朝が来る。


——ピピ、

電子音が鳴り体温計を確認する。


「……36度6分」


よかった。やっと湧人の熱が下がった。

深夜にはお婆ちゃんの熱も下がったし、これでようやく一安心だ。


「はあ~、」


あたしはグテッとうなだれる。すると、


「……う、ん……」


湧人がゆっくり目を開けた。


視線が部屋を一周して……


ピタッとあたしの所で固定する。


「……み、く ?」


まだ夢心地の銀の瞳があたしを見つめた。


「湧人? もう大丈夫?」


呼びかけるとパッと湧人の瞳が大きくなる。


「……えっ⁉︎ みく⁉︎ どうして⁉︎」


何故か慌てて飛び起きた。


「……? 覚えてない? 湧人とお婆ちゃん、熱で倒れてた」


「……え? ……あ!」


思い出したような湧人の顔。


「もう大丈夫。湧人もお婆ちゃんも熱下がった。でもお婆ちゃん、まだ咳と鼻水……」


「……みくが、看病してくれたの?」


「うん、まあ」


「…………」


驚いたような、何ともいえない湧人の顔。

ふわふわ視線が宙を泳ぐ……

……と、ふと自分の着ているものに目をとめた。


「……?」


前うしろ逆のそのTシャツとハーフパンツを違和感たっぷりに見つめている。
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