SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……み、く……⁉︎」


「約束したから! 約束したんだ、新しい人……湧人のお母さんと!」


「……え? 」


「湧人のこと、もっと聞いて、助けて、勉強するって!」


「……なに、それ……」


「とにかく、約束したから!」


あたしはぎゅっとその手に力を込める。


「……だから、今はそばにいる……」


「……み、く……」


朝のまぶしい光に目がくらむ。

目を閉じて、湧人を腕に閉じ込めた……


「「…………」」


無言でしばらく立ち尽くす……

陽射しがだんだん熱をもち、

重なった部分がじわり熱くなってくる……


"……ザワザワザワ……!"


……? 

なんか、風の音がやけにうるさく聞こえてきて、


"……ジイ〜……"


すごく視線が刺さってくる。


「……?」

ふと首を動かしてみると、廊下をはさんだ仏間の隣の奥の部屋。

ご先祖さまがジッとこっちを見つめていた。


……あ。


『コレ! 朝っぱらから何ぞ!』
『なんと大胆なおなごじゃ!!』
『いつまでそうしておるのだ!』
『はよう離れい! ハレンチな!』


口をパクパク動かして、遠くから言葉を投げてくる。


……ハレ、ンチ?


とりあえず言われた通り、あたしはパッと湧人を放した。


『時代も変わったのう~』
『人前で愛の言葉など……』
『ああ、なんとはしたない!』


「……どういうこと⁉︎」


おもわずご先祖さまに聞き返す。

突然の大声に湧人の背中がビクッとなった。


『しかしそこまで言うにはおぬし……』
『ちゃんと覚悟あっての事だろうのう?』


「……? 覚悟?」


あたしはご先祖さまの方へ歩き進める……
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