SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「ねえ、何の覚悟?」


『それはおぬし決まっておろうが!』
『湧人と、めおとになる覚悟じゃ!』


「……めおと? なにそれ?」

すると、


"ボボボボボッ!!"

『『『あんぎゃぁ〜っ!!』』』


次々とご先祖さまが吹っ飛んだ。
柱や壁の中にみんなの体がめり込んでいる。


「……みく? 誰と喋ってるの?」


……あ。

思い出して振り返る。

湧人がうしろに立っていた。


……そうだった。

湧人は霊を跳ね返してしまう体質。


「湧人、みんな飛ぶ。来ちゃだめ」


手を広げてあたしは言う。


「……みんな? 飛ぶって?」

「あ~、」

そこへ、


"ゲ~ホゲホッ!!"

激しいお婆ちゃんの咳が聞こえてきた。


「……あ、婆ちゃん!」


思い出したように湧人が駆け出す。


"ボボボボボッ!!"


『『『ぎゃあ~っ!!』』』


今度は別の所にいたご先祖さまが、壁や天井に突き刺さった。


「湧人! だめ! 動いちゃだめ!」


あたしは湧人を捕まえる。


「……え⁉︎ なに⁉︎」


「みんな吹っ飛んじゃう! 湧人は部屋に戻ってて! お婆ちゃんの事、あたしするから!」


「……ちょ、みく、 ほんとどういう事⁉︎」


「あとで話す!」


混乱しながら、湧人は部屋へと戻って行った。
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