SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……美空よ。能力を持たぬと言えど、悪どい輩はゴロゴロいる。もし不安定の時、相手が自分より腕のたつ者だったらどうする……ワシらのようなモンにも出くわしたりするのだろう?」


「……? わからない。でも、強いやつは確かにいた。ぼう、そうぞくって奴だった」


「「……暴走族?」」


「うん、一人やたら強くて。あたし、殴られて気を失ったんだ」


「……っ、お前がやたら弱いんじゃないのか!」


「……ど、どうしたのだっ! その後、ひどい仕打ちを受けたのではないか⁉︎」


「ううん、全然。悪いやつじゃなかったし、坊主もいいやつだった。そのあと警察に捕まったけど」


「……状況はよく分からぬが……」
「……なんて危なっかしい奴なんだ……」


二人は呆れた顔であたしを見つめた。



「……ハァ。 しかし、 ……うむ、」


溜息の後、玉ちゃんがゆっくり、大きくうなづく。


「長年、模索し続けてきた事の答えが、今ようやく見えたような気がするのう……」


前を見据えながら、そんな事を口にする。


「……親父……」


意味が分かったのか、凌駕がすぐにハッとした。


「まさかこういう形で恩義を果たす時が来ようとは……これも巡り合わせか……美空と出会うたのも、きっとそれが為のさだめだったのだ……」


……? さだめ?


「そうなれば少しの手助けぐらいでは、どうやら事は収まらん……ワシらもそろそろ本腰を入れて、改革を進める事にしようかのう……」


……? 改革?


「凌駕、お前の力が必要だ。手を貸してくれるか?」


「ああ。それはもちろんだ」


確信を得たようにお互い視線を合わせてる。


「美空。ワシらも小さな事から始めるぞ」
「コツコツとな」


首を傾げるあたしの前、二人はフッと笑ってみせた。


……?

「どういうこと?」


「なあに、ワシらもお前と同じように、一般社会に蔓延る悪と闘う事に決めたのだ」


「……え?」


「お前だけでは心配だ。立場上、一緒には動けないが、オレたちはオレたちのやり方でお前の敵を減らしてやる」


「いわば陰のパートナーだ。D.S.Pの天狗からすれば、アリほどの小さな力だろうが……」


「ふん。しがないオレらの力でも、お前一人よりはマシだろう」


有無を言わさず二人は話をまとめてしまった。
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