SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……ふぅ。間に合った……」
あたしは芝生に座り込む。
すると、
"バタバタバタ……バンッ!!"
「なにっ⁉︎ 今のっ⁉︎」
湧人が慌てて飛び出してきた。
「湧人。ただいま」
「……っ! みくっ! どうしたの! 何があったの! 今の音なに⁉︎」
「……? 送り火だよ」
「……送り火?」
「うん。ご先祖さま、今帰ったとこ」
あたしは残ったバクチクを湧人に見せる。
「……っ、もうっ! 近所迷惑だろっ!」
湧人はすぐにそれを取り上げた。
「……ハア〜、」
そのままヘナヘナとあたしの隣に腰をおろす。
……?
少し湧人の顔色が悪い。
疲れたような表情、銀の瞳が濁ってる。
「……湧人。もしかして、寝てないの?」
「……寝てないっていうか……」
「……?」
「……眠れなかった……」
湧人はボソッとつぶやいた。
「なんで? どうしたの?」
「…………」
「……湧人?」
「……心配した」
「……え?」
「オレ、みくがしるしに呼ばれるの初めて見たし。みくの役目は分かってるんだけど……
今頃、何か大変な目にあってるんじゃないかとか、巻き込まれてるんじゃないかとか、いろいろ考えて、心配で……」
……?
「全然、大丈夫だよ」
「でもっ、」
顔を上げた湧人の言葉が止まる。
「……?」
「……擦りむいてる」
湧人はあたしの腕や足に目をやった。