SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……み、く……?」
「湧人。忘れてない? あたしの能力」
「……え?」
「あたしのESP。センサー働く。いいか悪いかは分かるんだ」
「……っ、でもっ、」
「……湧人。 ひとつ、お願いがあるんだ」
「……? おね、がい?」
「うん。ちゃんと……見てほしい。いいか、悪いか、自分でちゃんと。 決めるのは、湧人の目で確かめて。 みんな悪い言っても湧人はちゃんと」
あたしは銀の瞳を見つめて言った。
「 ! 」
湧人はハッと息をのむ。
「……みく……」
銀の瞳を左右に揺らし、じっとあたしの顔を見る。
「……っ、」
苦いような顔のあと、
「……わかった」
湧人は静かに頷いた。
「……ごめん。みくの友達、肩書きだけで判断して。これからはみくの言う通りにする」
「……え、」
「ちゃんと自分の目で見て確かめる。どんな人物か、信用できる人間かどうか。だから……」
言葉が止まる……
「悲しそうな顔、しないで……」
切なそうに湧人が言った。
……?
悲しい、顔?
「あたし、悲しい顔、してた?」
「うん、してた。昨日もそうだった。オレ、みくのそんな顔、初めて見たからびっくりして……」
「……ふうん」
あたし、悲しい顔、してたんだ。
「……ごめん。昨日の事も本当に……」
また、湧人が謝ってくる。
「……? なんだっけ?」
「……ほら、好きでも嫌いでもないって言ったこと。 みく、なんか誤解してるから」
「あ~、湧人はあたしが嫌いのさらに嫌いだってこと?」
「ちがうからっ!」
急に湧人が声を強める。
「…………好き、だから……」
視線をスッと横に流し、湧人はあたしにそう言った。