SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇湧人と透のライバル意識



——チャプン……


「あ~気持ちええ~~」


まだ明るい昼下がり。
あたしは、お婆ちゃんと一緒にお風呂に入っていた。

お風呂はすごくぬるま湯だ。

お婆ちゃんいわく、夏の暑い時はこうしてぬるま湯に浸かるのが一番だとか。

その通り、昼間に入るぬるいお風呂は何だかとっても気持ちが良かった。


「……だげんど、みーちゃん。細いわりには出でんだねえ~」


お婆ちゃんがあたしの胸元を見ながら言う。


「……?」


「上向いてっぺし、パンッと張ってえ~、ほんとにきれいなえ~形しとるねえ~、最高のおっぱいだねえ〜」


そのままムニュッと胸をもまれる。

……?

「形に、いいも悪いもあるの?」


「あるよお~。婆ちゃんのはホレ、垂れて~しなびてしまったよお~。みーちゃんのがうらやましいなや~」


お婆ちゃんは自分の胸をつかんで揺らす。

お婆ちゃんが動くと、お風呂のお湯がザアッと流れた。



……お盆が過ぎて数日。

あたしはまだ湧人の家にいた。

だって、


「……あだだっ……」

「お婆ちゃん!」


お婆ちゃんがギックリ腰になった。

あの日、ご先祖さまを帰したあと、あたしは庭で寝てしまった。

湧人とお婆ちゃんがあたしを家に運び入れ、その時、お婆ちゃんは腰を痛めてしまったようだ。


「大丈夫? ごめん、あたしのせいで」


「みーちゃんのせいじゃないよお。腰は元々悪いがらあ~」


お婆ちゃんはニンマリ笑う。

だいぶ良くはなったけどまだ不安だ。

特にお風呂はツルッとすべりそうだから、あたしは昼間に一緒に入る。


「あ~さっぱりしたわあ~」


お風呂から出ると、お婆ちゃんは半分ハダカで、ゆっくりキッチンの方へ歩いていった。


……さて。

服を着ようと、あたしは脱衣所のカゴに手を伸ばす。でも、

……あれ。 着替えが、ない。


"……ウィーン……"


さっきまで着ていた服は洗濯中。


「…………」


……仕方ない。

バスタオルを巻き、そのままあたしはお風呂場を出る。

テクテク外へ歩いて行った……
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