SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
実は、お盆が終わった次の日、透がここに迎えに来た。
例によって黒木に頼まれたチームESPが、あたしの居場所を探したらしい。
「お婆ちゃんがギックリ腰」
「あたしのせいでそうなった」
「もうちょっと帰らない」
そう言うと、透は怪訝な顔で電話をかけて、黒木と何か話し合った。
それからは様子を見に、透がほとんど毎日やってくる。
「……つーか、おまえいつまでココにいるんだよ?」
透は横目であたしを見る。
「あ~。お婆ちゃんの腰治るまで」
「……もう治ってんじゃねーの? オレ昨日見たぞ、婆さん踊ってるとこ」
「……え、」
「黒木さん心配してんぞ? 早くマンション帰ってやれよ」
「帰れって、黒木もユリも、まだ帰ってない」
「黒木さんはたぶん面識ねえ知らねえ奴の家におまえを置いてる事が心配なんじゃねえの?」
「湧人は友達なんだ」
「だから、黒木さんからしたら知らねえ奴だろ?」
「……うん?」
「まあ、幸いちゃんとした家の様だし。オレがうまいこと言っといたからいいけど……コイツん家だって迷惑だろ? おまえがあんま長居してっと……」
透はチラッと湧人を見る。すると、
「ウチは全然構わないけど?」
前を向いたまま湧人が喋った。
「……おまえ聞いてたのかよ?」
「別に、聞こえてきただけだし。それに、一人きりのマンション帰すより、こっちの方がずっといいと思うけど」
「おまえなぁ、あのマンションはセキュリティがしっかりしてんの! 安全なんだよ!」
「……そういう事じゃなくて……」
湧人はこちらに振り向いた。
「一人は、寂しいんじゃないかなって……」
「……はあ? 寂しい?」
「……?」
「……なんだよ、おまえ寂しいのかよ?」
意外そうに、透はあたしの顔をのぞき込んだ。
……? 寂しい?
寂しいって、どんな感じだったっけ?
あたしは首を傾ける。
なんとなくは覚えてはいるけど、やっぱりよく、分からない。