SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


見た目は学校の体育館のような建物。

壁のない出入り口からは、遠くからでも中の様子が伺える。

無造作に停められた派手なバイクと派手な車、そして派手な感じの少年たちが、あちこちで小さなカタマリを作ってる。

何人ぐらいいるだろう。

10人ぐらいのカタマリが7~8コは確認できる。



"ブオン……ブオンッ!"


「ヤロー! 今日こそぶっ殺す!」
「血みどろのひき肉にしてやる!」

「「「「ギャハハハハッ!」」」」


空ぶかしするバイクのエンジン音、鳴り響く重低音の音楽、飛び交う大声……

そこにあるのは狂気、狂乱、剥き出しの闘争本能……


「…………」


なんか、うるさい。

耳をふさぐように、あたしはパーカーのフードを深くかぶる。


——タタ……


隙をみて、あたしは中へと潜り込んだ。



"ズムズム~♫#♯゛~ズン#♫♪゛~"


「おーい! オンナ起きたかー?」
「さーな、まだラリってんじゃね?」
「ポン酢で冷シャブしてやれよー!」

「「「「ギャハハハハ!!」」」」


中はもっとうるさかった。
耳はもちろん目にもうるさい……

壁という壁は落書きだらけ。
上半身ハダカの男も落書きだらけ。


……なんだコイツら。


鎖をぐるぐる巻いたやつ、顔中ピアスだらけのやつ、手にはそれぞれ金属バットや鉄パイプ、ナイフなんかもいじってる。


……変なの。


派手な武装のわりに隙だらけだ。
忍び込んだあたしの気配に誰もなんにも気付いてない。


"……タッ、トン!"


柱を伝い急いで天井までを登りきる。

格子状になった鉄筋の上を、あたしは自由に歩きまわった……


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……う、コホッ!」


タバコの煙が目にしみる。

天井はかなりタバコの煙がたまっていた。

うるさい所で良かった。

咳き込む声にも、やっぱり誰も気付かない。


——タンタン、


天井から下を見てまわる。

端っこにある部屋もトイレも上から全部丸見えだ。


「……あ、いた」


あたしはするする下へとおりてゆく。

縛られている一人の少女に近付いた。
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