SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……たん、けん?」
「そう、好きなんだ。こういう、汚らしいとこ見るの。そしたら偶然……見つけたから」
「……?」
少女は不思議そうな顔をする。
「とにかく、逃げよう? ココうるさいし、変なのいっぱい。いっぱいすぎて面倒だ」
「……え? ……でも、ここから逃げるなんて無理……」
……!
「シィ!」
あたしは人差し指を口にあてる。
何者かの気配……
そういえば部屋の外に一人見張りが付いていた。
なにか気付かれたかな……?
「誰か来る。寝たフリしてて」
「……っ!」
恐怖に引きつり、少女は地べたに横になる。
あたしは素早く扉の方に駆け寄った。
——ガチャ、
案の定、すぐにピンクの頭が入って来た。
扉の陰になったあたしには気付かず、確かめるように少女の所へ歩いて行く。
……と、
「……い゛っ……」
少女から不自然な声がもれてしまった。
「……あ? なんだ?」
すかさずピンク頭が少女に顔を近付ける。
そこであたしは——、
" グイッ! ……ガンッ!!"
背後から、そいつの首に手を回し、引き込んでヒザ蹴りを食らわせた。
「……うがっ……」
ドサッと体が崩れ落ちる。
……よし。
「もう大丈夫だよ」
あたしは少女に声をかける。
ところが、
「……あれ?」
本当に少女が眠ってる。
そのまま気を失ってしまったようだった。
「……ふぅ、」
あたしはボディ接着バリアーを体に這わせる。
"ガゴオオンッ! ……ガラアッ!"
壁を蹴破り、少女を外へと連れ出した。