SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……たん、けん?」


「そう、好きなんだ。こういう、汚らしいとこ見るの。そしたら偶然……見つけたから」


「……?」


少女は不思議そうな顔をする。


「とにかく、逃げよう? ココうるさいし、変なのいっぱい。いっぱいすぎて面倒だ」


「……え? ……でも、ここから逃げるなんて無理……」


……!

「シィ!」

あたしは人差し指を口にあてる。

何者かの気配……

そういえば部屋の外に一人見張りが付いていた。

なにか気付かれたかな……?


「誰か来る。寝たフリしてて」

「……っ!」


恐怖に引きつり、少女は地べたに横になる。

あたしは素早く扉の方に駆け寄った。


——ガチャ、


案の定、すぐにピンクの頭が入って来た。

扉の陰になったあたしには気付かず、確かめるように少女の所へ歩いて行く。

……と、


「……い゛っ……」


少女から不自然な声がもれてしまった。


「……あ? なんだ?」


すかさずピンク頭が少女に顔を近付ける。

そこであたしは——、


" グイッ! ……ガンッ!!"


背後から、そいつの首に手を回し、引き込んでヒザ蹴りを食らわせた。


「……うがっ……」


ドサッと体が崩れ落ちる。


……よし。


「もう大丈夫だよ」


あたしは少女に声をかける。

ところが、


「……あれ?」


本当に少女が眠ってる。

そのまま気を失ってしまったようだった。


「……ふぅ、」


あたしはボディ接着バリアーを体に這わせる。


"ガゴオオンッ! ……ガラアッ!"


壁を蹴破り、少女を外へと連れ出した。
< 349 / 795 >

この作品をシェア

pagetop