SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
◇旅立ち
「 力を持つ人間が必ずしもいい使い方をするとは限んないだろ? ましてなんの苦労もしないで生まれつき備わってるモンだったら、良いも悪いも使う人間次第で変わってくるからな 」
……あ。
Blue dollのカイドウとコブの顔が浮かんだ。
思い出したくもない顔……
あいつらも生まれつきのPSY能力保持者。
良い力の使い方など知らない、悪い方にばかりに力を注いだ奴ら……
「 まあ……オレらがコイツならって、しるしをつけた人間でさえ悪い方に力を使っちまった奴もいる。 人間は完璧じゃない……。どんな人間だってさ、善悪どちらにも転ぶ可能性があるんだよ 」
伯耆坊は目を細めて遠くを見つめた。
物悲しい雰囲気に、少し周りの空気が冷えた気がした。
「……しっかし、どんどんタチが悪くなってんのは確かだな。 おまえ殴ってた奴らもそうだ。薬使って人体実験して超能力を持つ人間を作り出すなんて……。 おまえの第六感、ESPっつーの? それも無理やり作り出されたモンだったしな 」
「…………」
あたしは、あの地下実験室の事を思い出した。
想像を絶するあの光景が、まざまざに頭に蘇る。