SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……外へ出た途端、
"……ウ゛ォンッ! ウ゛ォンッ!"
"……ブァボボボ! ブァボボボッ!"
「「「「オイッ! ゴラア!!」」」」
……?
さっきとは違う異様な空気に足が止まる。
何やらすごく物々しい……
「…………」
……気になる……
少女をおんぶしたまま、あたしは入り口の方へと歩いていった。
"ガシャアアア——ンッ!!!"
「……ッザケんじゃねえッ!!」
「さんざん揺さぶりかけやがって!」
「陽菜はどこだ! 早く出しやがれっ!」
荒々しい声。
入り口付近には、さっきよりたくさんの派手なバイクが停まっていた。
身を潜め、あたしはそっと様子を伺う。
車が邪魔でよく見えないけど、声だけは耳に飛んでくる。
「なあ~にムキになってんのお?」
「情にお厚い扇龍のみなさ~ん?」
「そんなにあの女が大事ですか~?」
「「「……ギャハハハハッ!!」」」
「……っるせーっ!!!」
「陽菜を出せ! ここにいんだろッ!」
……?
これって、ケンカ?
さっきの落書き集団と、もう一つの集団が、なにか言い争いをしている。
「ずいぶん骨抜きにされたモンだな」
「たかが一人のオンナによお」
「あの女、そんなにあっちのテクがスゲエのか?」
「「「イヤッホ~~~ウッ!!」」」
——ガアンッ!
「「……てめえらッ!!」」
「おっと、動くんじゃねえッ!!」
「オンナがどうなってもいいのか!!」
"バキッ! ドガッ! ……バキッ!"
「「「……ぐッ……!!」」」
「そぉそ、おとなしくボコられてろや!」
「「「 ギャハハハハッ!!!」」」
緊迫した空気……
強い殺気と苛立ちが最大限に混ざり合う……
……? ……あれ?
そこであたしは首をひねった。
……う~ん?
さっきから “ オンナ ” って言ってるけど
もしかして、オンナは今背中におぶっている、この少女の事だろうか。