SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


……外へ出た途端、



"……ウ゛ォンッ! ウ゛ォンッ!"
"……ブァボボボ! ブァボボボッ!"


「「「「オイッ! ゴラア!!」」」」


……?

さっきとは違う異様な空気に足が止まる。

何やらすごく物々しい……


「…………」


……気になる……


少女をおんぶしたまま、あたしは入り口の方へと歩いていった。



"ガシャアアア——ンッ!!!"


「……ッザケんじゃねえッ!!」
「さんざん揺さぶりかけやがって!」
「陽菜はどこだ! 早く出しやがれっ!」


荒々しい声。

入り口付近には、さっきよりたくさんの派手なバイクが停まっていた。

身を潜め、あたしはそっと様子を伺う。

車が邪魔でよく見えないけど、声だけは耳に飛んでくる。



「なあ~にムキになってんのお?」
「情にお厚い扇龍のみなさ~ん?」
「そんなにあの女が大事ですか~?」

「「「……ギャハハハハッ!!」」」


「……っるせーっ!!!」
「陽菜を出せ! ここにいんだろッ!」


……?

これって、ケンカ?

さっきの落書き集団と、もう一つの集団が、なにか言い争いをしている。



「ずいぶん骨抜きにされたモンだな」
「たかが一人のオンナによお」
「あの女、そんなにあっちのテクがスゲエのか?」

「「「イヤッホ~~~ウッ!!」」」


——ガアンッ!


「「……てめえらッ!!」」


「おっと、動くんじゃねえッ!!」
「オンナがどうなってもいいのか!!」


"バキッ! ドガッ! ……バキッ!"


「「「……ぐッ……!!」」」


「そぉそ、おとなしくボコられてろや!」

「「「 ギャハハハハッ!!!」」」


緊迫した空気……

強い殺気と苛立ちが最大限に混ざり合う……



……? ……あれ?

そこであたしは首をひねった。


……う~ん?

さっきから “ オンナ ” って言ってるけど

もしかして、オンナは今背中におぶっている、この少女の事だろうか。
< 350 / 795 >

この作品をシェア

pagetop