SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……えっと……
あたしは少し考える。
少女は落書き集団に捕まっていた。
という事は……そうか、
あとから来た集団が、この少女を助けに来たという訳か。
……ふうん、
「そうかそうか」
あたしはバイクの間を縫って歩く。
入口からハミ出てる、二人の金髪少年に近付いた。
「おい、そろそろ女連れてこいや!」
「お待ちかねのショーを始めようぜえ~」
中からはそんな声が聞こえてきていた。
「「「「……っ……!!」」」」
高まる緊張感……
あたしは——、
「あの~もしもし」
そっと金髪二人に声をかけた。
——ビクッ!
ハンパない肩の跳ね具合。
その場に似つかわしくない、怯えた顔と目が合った。
「「……⁉︎」」
まだあどけなさの残る少年。
少年たちは驚いたような、何ともいえない表情だ。
……? ……あれ。
なんか見たことあるような……
引っかかりを感じつつ、あたしはクルッと背を向ける。
「はい。オンナ、落ちてたよ」
ズイッと少女を差し出した。
「「……っ!!」」
固まる二人。 その直後、
「オイッ! 女がいねーぞッ!!」
「ああッ⁉︎ どういう事だっ!!」
慌てた声が飛びはじめる……
「……っ、てめえらまたかよ!」
「さんざん引っ張りやがって!」
「結局ココもスカシかよッ!!」
「陽菜はどこだ! 一体どこのアジトに隠してるッ!」
「「「……っっ……!!」」」
強気だった落書き集団に焦りの色が見え始めた。
「言わねえなら吐かすまでだが?」
「てめえら分かってンだろーなあッ!」
苛立ちは限界……
まさに一触即発……
……と、
「あ゛ーーーっ!! 」
「ヒナさーーーんっ!!」
固まってた二人組が、突然大声を張りあげた。
「「「「……⁉︎」」」」
一斉に、みんなの視線がこちらに向く。