SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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「ちょいシミんぞ」


テルが擦りむいたあたしの手足に消毒液を吹き付ける。


「……痛くねえか?」

「うん」


……あれから、ちょっといろいろあった。


坂道を転げ落ち、どうやらネンザしたらしいあたしは、初めてバイクに乗せられた。

ところが今度はバイクから転げ落ち、街路樹の木に衝突し、散歩してた犬に頭をガブガブかまれ、自転車のおばさんがネンザした足をひいてった。

青ざめたテルがすぐに扇龍のアジトへとあたしを連れてきたのだ。


「……ったく。おめえ、手え離してんじゃねえよ!」


「だって、バイクなんて乗ったことないし」


「……とに、まじビビったっつーの!」


呆れ顔のテルが、今度は足首に湿布をはる。


「……ごめん」


「……んでも、派手な転び方した割に、たいした事なくて良かったけどな」


「……うん」


とっさにバリアー使ったし。

言葉をのみ込み、あたしはぐるりと室内を見渡した。


……変わってない。


ベンチ、看板、道路標識……

室内には相変わらず、いろんなものが置いてある。


「またおめえと出くわすとはなぁ~」


「そうだね」


「しっかし、なんで……」


テルが何か言いかけた時、


……ブオオオーーーン……

ウ゛ォン……ウ゛ォン……

ウ゛ァボボボ……ボボ、ボ……


騒々しい音が聞こえてくる。


「……お。帰ってきたか」


ガランとした室内にゾロゾロと大人数が入ってきた。


「「「「……??」」」」
「「「「……ちーす」」」」


なんだコイツ? みたいな目でたくさん見られる。


——カシャン、


視線をさえぎるようにテルがついたてを一枚置いた。

……あ。

またこれ。 “工事中”と書かれた黄色と黒のしましまのやつ。


「ちょい待ってろ」


そう言うと、テルはその場を離れていった。
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