SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
"……ウ゛オオーーン……"
奏太に乗せられたバイクは、扇龍のみんなが乗ってるような派手なやつではなく、少し大きめの黒い普通のバイクだった。
なんでも、奏太はバイクを乗り分けているらしく、他にも3台バイクがあった。
でも、あたしはやっぱりバイクが苦手だ。
……だって、
「……おまえ何やってるっ! 危ねえだろ! ちゃんとつかまってろ!」
途中バイクを停車させ、たびたび奏太があたしに怒る。
うるさいから耳をふさごうとしただけなのに。
「……わかった」
「……っ! どこつかんでるっ! やめろっ! モゾモゾすんじゃねえっ!」
……もう。
バイクも奏太もいちいちうるさい。
かなりモタついた走行で、マンションへ到着した頃には空がオレンジ色になっていた。
「……家、こんな遠かったのか」
グッタリしながら奏太が言う。
——ドサ、
エントランスに入るなり、置かれたソファに寝転がった。
「……待ってっから、早く荷物取ってこいよ。オレは……ちょっと休ませてくれ……」
……?
さっきと口調が違ってる。
少しだけ奏太のズレが直っていた。
「わかった」
あたしはエレベーターで二階へあがる。
部屋に入り、適当に荷物をまとめ始めた。
……う~ん。
着替えは少しでいいかな。
それと……おかね?
スクールバックと水色バック、小道具入りのバックには、それぞれ財布も入っていた。金額はぴったり39万。
いつもそんなに使わないけど、減ればいつの間にかお金は補充されていた。
——カチャ、
共有リビングルームにある金庫から札束をいくつか取り出す。
必要な時は自由に使えと黒木がいつも言っていた。
えっと、あとはなんだろう。
悩みながら、目に入ったものを手早くバックに詰め込んだ。