SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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そして、まだ静かな午前のアジト。
「……奏太ね、あの家、あんまり好きじゃないみたいなの」
そうじする陽菜を手伝いながら、あたしは話を聞いていた。
「変だよね。奏太の家なのに、私たちの方が自由に使って、奏太はたまに帰るだけなんて」
「……ふうん」
あたしはアジトの奥を見る。
昨日はそのまま “ 幹部の間 ” に、奏太は泊まったようだった。
「……でも、どうして?」
自分の家が好きじゃないとか、そんなやつ、あたしは聞いた事がない。
「……それが分からないの。とても聞けるような雰囲気じゃないし」
手を止め、陽菜は苦笑した。
「どういうこと?」
「……ん~、ほら、奏太って人を寄せ付けない雰囲気があるでしょ? あんまり自分の事も話したがらないし。 聞こうとすると警戒して、堅く口を閉ざしてしまうの……」
「……うん?」
「前にね、思いきって家の事とか家族の事を聞いた事があるんだけど……なんか睨まれちゃって。 あの気迫で睨まれると私……なんにも、言えなくなってしまうの」
「……え?」
あたしは意味が分からない。
奏太には何回も睨まれてるけど、だからって別にどうって事はない。
「だから、昨日は本当にびっくりした。余裕がないっていうか、感情のまま、あんな風に喋る奏太は初めて見たし、美空ちゃんだって……」
「……?」
「……すごいね。奏太に何を言われてもひるまないで、堂々と普通に会話できるんだもん」
陽菜はぼーっとあたしを見つめた。
「……そう?」
あたしは昨日の事を思い出す。
普通に会話なんて、全然、出来てなかったと思うけど。
首を傾け、あたしは床に手を伸ばす。
散らばっていたマンガ本を片付けた。
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そして、まだ静かな午前のアジト。
「……奏太ね、あの家、あんまり好きじゃないみたいなの」
そうじする陽菜を手伝いながら、あたしは話を聞いていた。
「変だよね。奏太の家なのに、私たちの方が自由に使って、奏太はたまに帰るだけなんて」
「……ふうん」
あたしはアジトの奥を見る。
昨日はそのまま “ 幹部の間 ” に、奏太は泊まったようだった。
「……でも、どうして?」
自分の家が好きじゃないとか、そんなやつ、あたしは聞いた事がない。
「……それが分からないの。とても聞けるような雰囲気じゃないし」
手を止め、陽菜は苦笑した。
「どういうこと?」
「……ん~、ほら、奏太って人を寄せ付けない雰囲気があるでしょ? あんまり自分の事も話したがらないし。 聞こうとすると警戒して、堅く口を閉ざしてしまうの……」
「……うん?」
「前にね、思いきって家の事とか家族の事を聞いた事があるんだけど……なんか睨まれちゃって。 あの気迫で睨まれると私……なんにも、言えなくなってしまうの」
「……え?」
あたしは意味が分からない。
奏太には何回も睨まれてるけど、だからって別にどうって事はない。
「だから、昨日は本当にびっくりした。余裕がないっていうか、感情のまま、あんな風に喋る奏太は初めて見たし、美空ちゃんだって……」
「……?」
「……すごいね。奏太に何を言われてもひるまないで、堂々と普通に会話できるんだもん」
陽菜はぼーっとあたしを見つめた。
「……そう?」
あたしは昨日の事を思い出す。
普通に会話なんて、全然、出来てなかったと思うけど。
首を傾け、あたしは床に手を伸ばす。
散らばっていたマンガ本を片付けた。