SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……てめえッ!!」
怒りをあらわに奏太が次男坊に近付いてゆく。
「おっと動くな!」
次男坊は乱暴にそばにいた中学生くんを締め上げた。
躊躇なくナイフを突き付ける……
「動けばコイツら全員命はねえ!」
「……うっ、」
刃先がグッと首に食い込む。
中学生くんの首元から、タラッとひとすじ血が流れた。
「……ッ! きたねえぞッ!」
なす術もなく奏太が次男坊を睨みつける。
「ヒヒャハハハ! 俺にとっちゃ最高の褒め言葉だなあ!」
次男坊は声を高らかに笑い飛ばした。
「「「「……ッッ……!!」」」」
怒り、焦り、緊張感……
これまで以上に扇龍は嫌なムードに包まれる。
そんな中、
「……なあ、取引をしないか」
ふいに次男坊が切り出した。
「……あ?」
「まずは黒パーカー、お前はおとなしく投降しろ。そして月島、お前は黙って女を差し出せ。そうすればコイツら全員無事にそっちへ引き渡す」
「……なにッ……」
「コイツらだけじゃねえ。今いる組連中も即刻ココから立ち退いてやる。覇鬼も二度と扇龍に手出しさせねえ」
「……ッ…… 」
「悪い話じゃないだろう。もともと俺らの目的は黒パーカーだ。その為に族潰しに働き、疑わしきは排除した。
だがそのせいで扇龍が迷惑をこうむってきたのも事実……
女一人でカタが付くなら、扇龍にとってもそれが一番いいだろう」
「黙れッ!」
「フン」
次男坊がチラリ、ヤクザに目を向ける。すると
「「「……はうっ……!!」」」
「「「……ううっ……!!」」」
ヤクザは更に強く陽菜や中学生くんをひねりあげた。
みんなの顔が苦痛に歪む……
「やめろッ!」
「全ては全部お前ら次第だ。黒パーカーひとりで扇龍みんなが救われる。それとも、みすみす皆を犠牲にするつもりか?」
「……ッ!」
苛立つ奏太……
「…………」
あたしで、みんなが救われる……?