SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……ッ! 鬼頭会が何故!」
次男坊も動揺し、玉ちゃんたちを睨みつける。
玉ちゃんはチラッとあたしの方を見ると、
「……何故だと? 挑発したのはそっちだろう!
ワシの娘を処刑すると、先ほど電話で貴様がなあッ!!」
声を荒げてそう言った。
「……っ! 電話って……まさかっ!」
「おのれっ! よくもワシの娘にあのような鬼畜な真似をっ!」
「……バカなっ! 鬼頭会に娘など!」
……と、
「遅くなってすまない」
澄んだ声が辺りに響く。
「……あ、」
……いつの間に……
あたしのそばには一人の青年。
玉ちゃんの息子、“ 若 ” がいた。
「少し、話を合わせていろ」
みんなには聞こえない、ささやくようにそう言って、若は次男坊に目を向ける。
「オレの女だ」
「……あ?」
「彼女はこの鬼頭会若頭、鬼頭凌駕の婚約者だ!」
強い口調で言い放った。
「……っ……な、に⁉︎」
「「「……ッッ……!!」」」
アジト中に衝撃が走る。
「「「……マジ、かよ……」」」
「「「……美空が、鬼頭会の……」」」
「これで分かったか? 貴様はよりにもよって鬼頭会の大事な女に傷をつけた」
「……ッ!!」
「彼女だけじゃない。貴様、うちの親父にも何か心当たりがあるだろう。
先日はよくも深手を負わせてくれたな。その所業、我ら鬼頭会への宣戦布告とみなす。
覚悟しておけ。貴様等を片付けたその後は山川組の本部だ。本日をもってその権力の全てを取り潰す」
「「「「……ッッ……」」」」
鬼頭会がじりじりと、山川組に迫ってゆく。