SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「とにかく大丈夫ですから。それと黒木さん、彼女はもう万里ではありません。 彼女は、美空。
天使美空(あまつかみく)です 」
「「あまつか みく?」」
黒木と一ノ瀬の声がかぶる。
二人とも眉根を寄せて困惑の色をにじませた。
「おい一樹、どういう事だ 」
「 まあ、説明はあとで 」
一樹は少女に向き直る。
「美空、この人たちはあなたを傷つけたりはしません。だから大丈夫ですよ 」
"……ブーン……"
バリアーが振動し、風が一樹の黒髪を揺らす。
「 美空、大丈夫 」
"ブン……フルルル、ル……"
やがて、“シュン”と小さな音を立て、バリアーはほどけるように消えた。
辺りがシンと静まりかえる。
美空はゆっくりとまぶたを開けた。
その瞳は、赤にも茶色にも見える、きれいな紅褐色であった。