SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
そうこうしているうち……
「ブハハハッ! 口ほどにもない連中が!」
乱闘はあっという間に決着がついた。
もうすでに意識がなく、ズタボロで横たわる次男坊……
山川のヤクザ、覇鬼たちも所狭しに倒れている。
「……さて、」
凌駕がスッとあたしを抱き上げた。
そのままゆっくり歩き出す……
「「「「……っっ……」」」」
集まる視線……
「……?」
扇龍のみんながあたしを見ている。
その顔は信じられないといった表情だ。
「扇龍の総長はキミかな」
凌駕が奏太の前で足を止めた。
「…………」
「美空がいろいろ世話になったね。 まったく、オレが目を離すとすぐにあちこち飛び回るものだから……」
「…………」
「今後は勝手をしないよう、オレがしっかり彼女を保護する。迷惑をかけた詫びに、破損した建物はきっちり補償させてくれ」
奏太は何も答えない。
ただ、何かを疑うように、交互にあたしと凌駕を見ている。
「……っ! おお美空!」
「「大丈夫か! 美空!」」
玉ちゃん、柳、小暮が駆け寄ってきた。
「まったく心配させおって!」
「あ〜あ、こんな傷だらけに……」
「きれいな顔が台無しじゃねえか……」
「あ〜、」
「お前は早くワシの家に!」
「腕のいい医者がいっからよ」
「早く治療してもらえ……」
「……うん……」
「さあ行こう。忘れ物はないか?」
凌駕が顔をのぞき込む。
……忘れもの……
「……あ、 ……薫!」
「……薫?」
「知り合いなんだ! 連れて帰らないと! 車の中!」
「……あの子か、柳」
「……は!」
柳が薫を運び出す。
「あとは大丈夫か?」
「……えっと、電話のやつ……」
「……ああ、あれか?」
小暮があたしの電話を拾ってくれた。
「では」
凌駕が出口へ歩いてゆく。
……と、
足をとめて振り返った。
視線は倒れた覇鬼と山川組……
「まだ耳は聞こえているのだろう? よく覚えておくんだな、彼女の背後に鬼頭会がいる事を。 今後もし彼女に何かあれば鬼頭会が黙ってない。即刻組が報復する」
そう言うと、さっとアジトを後にした。