SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
◇静けさの後
「ああ言っておけばだいぶ抑止力になるだろう。まれに頭のおかしな奴が一人二人は向かうだろうが、お前なら十分対応できるはずだ」
あたしを車に乗せながら、凌駕がそんな事を言う。
「凌駕。ありがとう。助けてくれて」
「……まあ、今回は敵が同じだったからな。といっても組が今改革途中で、本当はもう少し煮詰めてからと思っていたが……
先にお前がいろいろ巻き込まれていると知ってな。事を急いだという訳だ」
「……うん?」
「安心しろ。さっきはあのように言ったが、こうして表立って接する事はもう控える。あまり一緒には動けないが今後もサポートは——」
「——どういうこと?」
あたしは首を傾ける。
「どうして一緒はだめなの?」
凌駕を見つめて聞いてみた。
「……どうしてって、立場上問題があるだろう」
「問題って?」
「オレたちは極道で、お前は警察一味なんだぞ」
「……え? あたし、警察なの?」
「……っ、D.S.Pは闇の特殊警察だろう!」
……あ。
「……知らなかった。 でも、そういえばそうか……ふうん、あたし、警察のやつだったのか……」
「……お前、 阿呆か……」
凌駕は呆れた顔をした。
————その後、
あたしと凌駕たちは別行動をとった。
鬼頭会はみんな山川組の本部へ向かった。
宣言通り、やつらを潰しに行ったのだ。
あたしは薫と共に玉ちゃんの家に運ばれた。
薫はまだ目を覚まさないけど……
あたしは医者の治療を受けた。
神経がどうのこうのとかで、今は指が動かないけど、黒木が戻ってくればちゃんと動くようになるだろう。
——キ……
「……本当にココでいいんですか?」
緊張した顔でスーツのお兄さんが聞いてくる。
玉ちゃんの家から車であたしと薫を送ってくれた。
「うん、もう近所だから。ありがとう」
薫をおぶって車を降りる。
あたしはゆっくり道を歩いた……