SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……薫っ!」


透が薫の肩を抱く。


「……ぅぅっ……わああ〜っ!!」


せきを切ったように、それから薫はわんわん泣いた。

泣いて、泣いて……

泣いた後はぐったり透の肩に寄りかかり、ポツリポツリと話を始める……


——タ……

あたしはそっとその場を離れた。

だって、今は二人で話したい、そんな思いが伝わってきたから……


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「……ふう、」


その後は、さっきの余韻に浸りながら、あたしは夜道を歩いていた。


……今度こそ二人、分かり合えたらいいけど……


そんな事を思いながらのろのろ道を歩いてる。


——グラッ……


「……っ、」


やっぱり頭はクラクラしていた。

さっきから息も苦しいし、体がだんだん重くなってくる……


「……はあ、 あれ……」


胸に広がる嫌な予感。


“ピー!”

それを後押しするように、高い音質が頭に響いた。


……あ。


〈 “ 美空⁉︎ 大丈夫ですか? ” 〉


久しぶりの一樹の声。


「……いつき……」


と、いう事はやっぱり……

確信に変わる嫌な予感。

あたしはすっかり忘れていた。


“今日が満月だということを”



〈 “ 美空? もうしるしの力は戻っているのですか? バリアーは……” 〉


「……あたしは、 大丈夫 ……」


〈 “ 美空? ” 〉


「……大丈夫だから……」


それだけ言ってアンテナを閉じる。

無理やり一樹との遠距離会話を終わらせた。


「……ハアッ、ハアッ、」


本当は全然大丈夫なんかじゃなかった。
もうすでにマイナスの反応が出始めている。しかも、


「ハアッ、ハアッ……ハアッ!」


黒木はあと少しでしるしの力が戻るかもしれないと言っていた。けれど、いまだに力は戻らない。

その上バリアーも不調となると……


「……ううっ!」


……そんな……


まさか、また何かの感情が戻るというの?
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