SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……はあぁぁ! 」


もう、ふんだりけったりだ。

あたしの場合、なんだか悪い事が重なって起きる気がしてる。


「……っ、 ……ハアッ、」


……だめだ……


……こんな所じゃ……


何が起こるか分からない。

誰に危害を与えてしまうか、傷付けてしまうか——、


……!


街灯に照らされ目に映るのはハンカチの木のあの屋敷。


……よかった……


あたしは中へと入り込んだ……


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「……はぁ、ううっ!!」


ハンカチの木の前。

あれからすぐに状態が悪化した。

猛烈な寒さと倦怠感があたしを襲う。

ぶるぶる震えながらあたしは地面にうずくまっていた……


「……ハアッ、 ……ハアッ、」


でも、ここなら大丈夫。

これから何が起こっても誰にも見られないし気付かれない。


「……っ、」


こうなればどんな苦しみにも耐えようと、あたしは覚悟を決めてゆく。

ところが、


「……み、く……?」


声にあたしはハッとした。

顔を上げるとすぐに人影が映り込む。


「……ゆう……」


月明かりの下、湧人がそこに立っていた。


「……っ! みくっ! ……ちょっ、どうしたのっ……そのケガっ!!」


「……ハアッ、……ハアッ……」


「みくっ!」


「……どうして……」


「……え、」


「……ハアッ……どうして、いるの……」


暗がりでも湧人の顔が青ざめているのが分かる。

緊張感のある強張った口調で湧人は返した。


「……っ、うまく言えないけど、ものすごく嫌な予感がした! 居ても立っても居られなくて……気付いたらここへ来てたんだ!」


「……ハアッ、 ハアッ!!」


「みくっ! どうしたのっ!」


「……ハアッ、 だめだ、 湧人……」


「……みく⁉︎」


「……まだ言ってない事……あたし、満月が……」


「……満月⁉︎ 満月がどうしたのっ!」


「早く離れてっ! 湧人を傷付けたくないっ!」


バッとあたしは背を向ける。

また地面にうずくまった……


「……み、く……?」


前は取り戻したいと思っていた感情。


でも、今は取り戻したいとは思わなかった。


感情を取り戻せば、その反動で自分がどんな行動を取るか分からない。


この間、言葉や刃物で傷付けてしまった、黒木と一樹の顔が浮かんでいた。



「……うう、ううっ!!」


震える体、グラつく視界。

マイナスはどんどん反応を強めてゆく……
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