SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……透?」
「……悪かった……」
透はあたしに頭を下げた。
「ごめん。おまえにこんな怪我させちまって。薫から聞いた……その、いろいろ……」
透は少し口ごもる。
何か察したのか湧人がその場を離れていった。
「……おまえが助けてくれたんだってな。 でもそのせいで殴られて、刺されたって……」
「あ〜、」
「本当に悪かった」
透は頭を下げたまま……
「ちがう。薫のせいじゃない」
「……いや、その後の事もだ。お前、薫を助けようとまた怪我を……」
「大丈夫。こっちは動く。ケガじゃない」
「…………」
「……ねえ、座ったら?」
あたしは立ったまんまの透に言う。
目を伏せたまま、透は縁側に腰を下ろした。
「……薫は、大丈夫?」
「ああ。もうだいぶ落ち着いた」
「そっか」
「ほんと驚いた。薫が……まさかヤクザと関わってたなんて……」
「うん」
「しかも、今日ニュースでやってた山川組の次男坊だったらしい」
「……うん」
「でも、不幸中の幸いって言うのか……組の抗争争いで山川組は壊滅状態。そいつは今頃ムショの中だ……」
透はハア〜っと息を吐いた。
「……あれから、薫といろいろ話した。今まで言えなかった事、聞きたかった事……
あいつ、いろいろ抱え込んでてよ。何か悩んでんのはオレも薄々感じてたけど……
結局、見て見ぬふりしてたんだよな。オレ、薫とちゃんと向き合えていなかった」
「…………」