SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「昨日一日、ゆっくり話して、今後どうしたらいいか話し合った。 ……つっても、簡単に答えは出なかったけどな。それでも取っ掛かりにはなったと思う。
薫の気持ちもだいぶ安定してきたし、最後は自分より、おまえの話ばっかしてた……」
「……あたし?」
「ああ。怪我の事、迷惑かけて悪かったってな。それと一番はおまえに衝撃を受けていた」
「……衝撃?」
すると透はあたしと目を合わせる。
「あん時、おまえが薫に言った言葉だ。“ それがどうした、理不尽に立ち向かえ ” ってやつ。
オレも驚いた。普段口ベタなおまえがあんな饒舌に……。 なんつーか、だから余計胸に刺さった」
「……あ〜、」
あたしはあの時の自分を思い出す。
怒りに似た何かが胸を厚く覆って、突き動かされるように、あたしは言葉を並べていた……
「……ありがとな。いろいろ……」
「ううん」
「……悪かったな、いろいろ……」
「ううん」
「……痛むか?」
さっと透の手が伸びる。
あたしの右手に軽くふれた。
「全然」
「……けど、その顔……」
今度は頬に手がふれる。
「治るまで学校休めよ。担任には適当に言っとくからさ……」
「大丈夫だよ」
バックからコンシーラーを取り出す。
「トレーニング。教わったんだ、アザの消し方」
それを顔にぬってみた。
「……消えた?」
「……ブッ! なんだおまえその顔っ……」
「……?」
「まるでどっかの変な妖怪じゃねえか!」
透はケラケラ笑い出す。
……妖怪? あたし妖怪なの?
「……はあ〜、ダメだな。全然隠しきれてねえし。やっぱ治るまで学校来んな」
「大丈夫だってば」
「おまえが大丈夫でも周りが気にするっつーの! いいから黙って言う事聞いとけ」
「……ふうん……」
あたしはウエットティッシュで顔をふく。
さっきまで暗かった透が少し元気になっていた。