SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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——ティン……


騒がしかった和室に静けさが訪れる。

透が帰り、今は湧人と二人きり。

チョコを食べながら、あたしはぼんやり湧人の背中を見つめていた。


"……カリカリカリ……"


湧人はまだあたしの宿題をやっている。


……すごい集中力……


あんなに大量だった宿題が、三分の一にまで減っていた。


「……湧人。 ごめんね」


あたしはおもわずつぶやいてる。

すると、


「……なにが?」


手を止め、湧人が振り返った。


「宿題。ほとんど湧人と透」


「別に、好きでやってるだけだし」


「ごめん。あたしがバカだから」


「……っ、みくはバカじゃ……」


「ううん。みんな言うからそうなんだ」


あたしはふっと視線をそらした。


「……みくっ、」


「湧人。あたし、本当に分からないんだ」


「……っ、  ……なに?」


「勉強。8年と、4年ぶりぐらいだから。学校」


「……え?」


「小学二年の秋まで行った。でも、それからずっと行けてなかった」


「……どう、して……」


「…………」


「……ねえ、みく……」


立ち上がり、あたしは4歩、移動する。


「……地下に……」


「……?」


「あたし、8年、地下にいた」


縁側から空を見上げて切り出した。


「……えっ?」


「監禁されてたんだ。悪いやつに」


「……っ……!」


離れていても湧人が息をのむのが分かった。


ああ、そういえば……


あたし、湧人に過去の話はしていない。


伯耆坊と融合する前の、過去の話を……
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