SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……んあ!」
思い出したように黒木が前に身を乗り出す。
「そ〜いえばアイツ、だいぶミクのこと心配してたぜえ〜? この間の満月ん時ヨオ〜」
「ねえ〜?」
二人は顔を見合わせた。
「電話がナカナカ繋がらねえし、イツキの遠距離会話だって……」
「途中で切れたって、一樹くんすごく焦ってたんだから……」
「……あ〜、」
「でも、大丈夫だったって聞いて、アイツも安心してたけどな〜?」
「……そっか」
「ソレとお〜、満月ん時、一緒にいたユウトってヤツの事だけどお〜、」
……?
「……ゆうと?」
「オウ。リストには載ってなかったぞ? そんなヤツ……」
「リスト?」
「ほら、前に美空、しるしの力で全国の隠れPSYの持ち主探し出したじゃない。その時のリストよ」
「……あ〜、」
そういえばそんな事も……
「ウ〜ン……リストになかったってコトは〜、実はソイツ、悪党とか?」
「ちがう! 湧人は悪じゃない!」
「……じょ、ジョーダンだって〜」
「……でも不思議よね。満月の反応が治まったっていうから、てっきり私と同じ能力の持ち主だと思ったのに……」
「ミク、他に何か変わった所はナイのか? そのユウトってヤツ」
「……変わった所?」
あたしは首を傾ける。
……あ。
「……そういえば……」
「ナンダ?」
「湧人は霊を弾くんだ」
「……霊?」
「……幽霊?」
「うん。あたし、お盆すごく助かった」
「……ほお〜、」
「いわゆるGアンチってやつね」
「……? ……じーアンチ?」
「私たちの間ではそう呼んでるわ」
「確かにいるらしいけどな? そういうヤツ」
「でも、だとしたら珍しいわね」
「オウ。Gアンチつったら、たいてい科学者タイプなんだ。それも未だに幽霊をプラズマだ〜! とか言ってる古〜いカタブツの中のカタブツだ」
「ちがう。湧人は古くない」
「……じゃ〜なかったら……」
黒木は自分の胸に手をあてる。
「よっぽどココが強えとか?」
軽くトントン叩いてみせた。