SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

————数日後。


「……ああ、そうそう、薫がまた遊びに行ってもいいかって言ってたぞ?」


「うん、いいよ」


学校が終わり、あたしは透と帰り道を歩いていた。


「……たく、薫のやつ、おまえの話するといっつも目キラキラさせてよ」


「うん」


「今日はどうだった? とか毎日うるせ〜」


「ふうん」



あれから、薫とは何回か会っていた。

最初は落ち込んでいたけど、話してるうちにだんだん笑顔が増えていった。

この間は透と一緒にあたしのマンションに遊びに来て、あたしが最近どんな霊をみたかとか、その時の幽霊との会話、退治した話を薫は食い入るように聞いていた。



「霊感ある奴、今まで周りにいなかったから、おまえの話がよっぽど新鮮だったらしい……」


「へえ」


「悪霊退治とか、自分よりかなり霊感強いってビックリしてたぞ。なんかおまえ、ESP能力者みてえだな!」


「……あ〜、うん、」


「惜しかったよな、マジESPだったらおまえもクビにならずに済んだのによ……」


「…………」


マンションの前で透と別れる。

少し歩き、あたしはその場に立ち尽くした。


「……う〜ん……」


幽霊のこと、あんまり喋らない方が良かったかな?

透にはESPの事は内緒だし。


「……でも……」


ぼんやり空を見て思う。

そもそも、なんで透には内緒なんだっけ?


「……えっと……」


口実が崩れるから。


「……なんの……?」


えっと、クビになった口実。

あたしの能力は加齢停止。でもそれは何の役にも立たないから、


「……だからクビに……」


……?

別に、ESPとバリアーが不安定だからって理由でも問題ないんじゃないのかなあ?

透とは毎日一緒なんだし、隠すのもなんか疲れてきた。


「……う〜ん……」


あたしは首を傾ける。

すると、


「……フッ、」


小さな吐息が耳に届いた。


……?

見ると、マンションの入り口に、見覚えのある男の姿……


「相変わらず、独り言が多いな」


「……あ!」


ツヤのないミルクティ色の髪の毛。
長い前髪から覗く威圧的な瞳……

扇龍の総長、月島奏太がそこにいた。
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