SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……?
なんか奏太の様子がおかしい。
さっきから変によそよそしいし、完全に前のニセモノ奏太に戻ってる。
体から見えないナイフが飛び出しているようだった。
「嵐のような女だな」
「……うん?」
「今じゃ、お前は伝説の女になっているぞ」
「……伝説の、女?」
「ホント、お前には驚かされてばかりだ。黒パーカーだったというのはもちろん、まさか鬼頭会の女とは……」
「……あ〜、」
「ご丁寧に、あのあと鬼頭会が全てその後の始末をつけた。アジトのリフォームまできっちりな」
「……へえ、」
「山川を潰した鬼頭会は完全に昔の勢いを取り戻した。もはや大熊をも上回るナンバー1勢力だ」
「…………」
「共に覇鬼も壊滅した事で、扇龍も全国トップの族となった。今じゃ扇龍に加入したいと毎日たくさん人が来る……」
奏太はハア〜と息を吐く。
そのまま後ろに深くもたれかかった。
“……タッタッタッタ……!”
“……ウ〜……キャンキャン!”
「「わ〜! キャハハハ!!」」
ランニングをする人、犬の散歩をする人、遊具で遊ぶ子どもたち。
公園には、まだたくさんの人がそれぞれの時間を楽しんでいる。
あたしたちはしばらくその光景を眺めていた……
——ヒュウ〜……
真夏とは違う、涼やかな風が髪の毛を軽く散らしてゆく。
「……なあ……」
奏太がふいに切り出した。
「……?」
「さっき一緒だった奴、誰だ?」
「……さっき?」
「一緒に帰って来ただろう」
……ああ、
「あれは透。薫の兄弟。学校一緒に、行ったり帰ったり」
「彼氏はどうした。大事な女なら普通送り迎えぐらいするだろう。それとも、まさかソイツとも付き合ってるっていうのか……」
「……かれしって?」
「あの若頭の事だ。お前、鬼頭会の女だろ」
「うん。あたしは女、男じゃない」
「…………」
また、沈黙……