SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……奏太?」


「……やはりな」


やっと奏太がこっちを見る。


「お前、本当は一体何者なんだ」


怪しむようにあたしに言った。


「……? 何者って?」


「おそらく、鬼頭会の女というのは嘘だろう。ずっとお前と一緒にいたんだ、それぐらいすぐに察しがつく。 ……あの若頭が年の離れた幼稚なお前を婚約者になど、いくら考えてもおかしな話だ」


「……え、」


「それにだ」


——バッ!

奏太があたしの手をつかむ。


「……⁉︎」


「お前、あの時相当な重傷を負ったはず……。それが何故、擦り傷一つ見当たらねえんだ?」


なめるようにあたしの左手を見回した。


「……あ、」


「あともう一つ」


……まだ、あるの?


「…………」


奏太はあたしの頭からつま先までをじいっと見る……


「お前、只の人間じゃないだろう? お前のような女にあれだけの格闘が出来るはずがない」


奏太はキッパリ言い切った。


……? ……えっと、


「できるよ。トレーニングすればちゃんと」


「そんな訳がないだろう! 言っておくがオレの目は誤魔化せねえぞ!」


「……え?」


「普通の女子高生が実は族の総長とかヤクザとか、あれはマンガや小説の中だけの話だ。現実ではありえねえ……」


グイッと両手を引っ張られる。

確かめるように奏太は指や甲をさわってきた。


「……⁉︎」


「拳は打てば打つほど骨が出てくる。格闘スキルがある奴ほど、その手はゴツゴツと骨ばっているものだ。顔だって打たれればそうなる」


「……ほね……」


「……確かに、少しは出来るようだがな。だがやはり無理がある」


「……?」


「お前のその細い体だ。それで何故、強い打撃や防御が出来る。腕や足、体にもおのずと筋肉がつくものだ。お前のどこにその筋肉があるというんだ」


「……きんにく……」


「それが筋肉隆々のゴツゴツした女子高生っていうんならありえなくもねえけどな。だがお前は程遠い……」


「…………」


「なあ、一体お前は何者なんだ」


疑うようなその眼差し……
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