SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……えっと……」


……もう。

なんでこんなに問い詰められなきゃならないんだ。 すると、


"ジワ〜ッ"


右手のしるしが反応する。

あたしはスッと立ち上がった。


「なんだ、どうした」

「うん。ちょっと」


奏太を残し、あたしは少し移動する。

後ろ向きに座ってる、一人のおじさんに近付いた。


"ジジ"

……よし。

いつの間にかESPも戻ってる。

あたしは狙いを定めると……


「悪霊退散っ!!」


そのハゲ頭をぶっ叩いた。


「……っ!!」


……う〜ん、これは……


しつこくてタチの悪い悪霊だ。

このままじゃ、このおじさんが取り殺される。


「もう! どっか行って!」


"バチン! バチン!!"


あたしはハゲを……いや、おじさんに取り憑いている悪霊を叩きまくる。


「……おいっ……おまえ何やってるっ!」


奏太があたしの手を止めた。


……あ。

ずぶ濡れの男の亡霊がその姿を弱めていく。

やがて完全にそこからいなくなった。


——ユラリ……

おじさんが立ち上がり、ゆっくりこちらに振り返る。


「……っ、 いやっ……あのっ、」


慌てる奏太。すると、


「いや〜ありがとう! なんだかよく分からないがキミのおかげでひどい肩こりが治ったよ〜!」


おじさんは満面の笑みを浮かべて言った。

そのままスキップしながら帰って行く。


「…………」

「よかった」


でも、またすぐにしるしが反応する。


——タタッ

「おいっ!」

「ねえ、どうしたの?」


あたしは三人の親子に声をかけた。


「……おい美空……」


戸惑う奏太。

目の前には、やつれた顔のお父さんとお母さん、そしてランドセルを背負った女の子。

女の子は悲しげに目に涙をためている。
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