SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「なにか困ってるんでしょ?」
あたしが言うと、
「……頼むから止めないでくれ……」
「……私たちは疲れてしまったの……」
「……っ……ううぅぅ……ううっ……」
親子はワナワナ肩を震わせる。
「借金地獄でもう限界なんだ……」
「せめて三人一緒にあの世に……」
「うっ、うう……わ〜んっ……!」
泣きながらあたしにそう言った。
「借金って? お金がないって事?」
黙ってうつむく三人の親子。
やれやれと、奏太がコクンとあたしに頷く。
「……ふうん、そっか」
あたしはぐるっと辺りを見回す。
すると、さっきまで座っていた奥のベンチに目がいった。
そこにはさっき奏太から受け取った、あたしの大きなボストンバック。
……あ!
すぐにバックを持ってくる。
たしかこの中に……
「あった!」
バッグに札束を詰めていた事を思い出し、それを全部取り出した。
「はい、これ。あげる」
「「「……っっ……!!」」」
絶句して固まる三人の親子。
同じく奏太も固まってる。
「ここに入れておくね」
10コ以上の札束を、あたしは女の子のランドセルに詰め込んだ。
「「「……っっ……!!」」」
「……お、おいっ!」
動揺しまくる奏太の前、
"ジワ〜ッ"
またまたしるしが反応する。
「……あっ、犬! 待って! 奏太そっち行った! それ捕まえて!」
「……はあっ⁉︎」
あたしはケバケバの犬を追いかけた。
それからも、ずっとしるしがあたしを呼んだ。
あたしが事件を呼んでいるのか、事件があたしに寄ってくるのか、
とにかくあたしは公園内を走り回り、あたしを追いかけて、奏太もいっぱい走りまくった。