SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……悪かった。あの時、守ってやれなくて……」
頭の上で響く声……
「……奏太……」
いろんな思いが伝わってくる。
狭くて、重くて、息苦しい……
悲しいような、責めるような、そんな気持ち。
……と、
「……!」
奏太の中の奥の奥、
ジクジクとした深い痛みも流れてきた。
……あ、れ……
この痛み、どこかで……
すると、
"ジワ〜ッ"
右手のしるしが反応する。
————えっ?
視えたのはあたしもよく知るあの人物。
「……いつ、き……?」
あたしはその人物の名を口にした。
「……っ!」
すぐに奏太があたしを離す。
「……おまえ……」
「…………」
「人のプライバシーは視ないようにしてるんじゃなかったのか」
しかめっ面でじっとあたしを見下ろした。
「……なんで……」
あたしは訳が分からない。
少し幼かったけど、あれは確かに一樹だった。
一樹が、なんで奏太の中にいるのだろう……
「…………」
目の前には警戒心むきだしの奏太。
「一樹、知り合いなの?」
構わずあたしは聞いてみる。
「だから視んなっつってんだろ!」
「ねえ、知り合い?」
「おまえなあ!」
「ねえ、奏太」
「……ハア〜、」
ガシガシと奏太は不機嫌そうに頭をかく。
「……アニキだ」
「……え?」
「月島一樹はオレのアニキだ。だが、もう死んだ。6年前に……」
ぶっきらぼうに奏太は喋った。