SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……うん。実は、兄弟だったんだ。あたし知らなかったんだけど今日知った。 ……奏太、一樹の弟だったんだ……」
「……ん〜とお、え〜とお、」
「……一樹くんの、弟……?」
「うん」
「うへ⁉︎」
「えっ⁉︎ 一樹くんに弟がいたのっ⁉︎」
「うん」
「……つまり、は……」
「お友達が、実は一樹くんの弟だったって……事⁉︎」
「うん。月島奏太ってやつ」
「……マジでか……⁉︎」
「……苗字……確かに一樹くんも月島だわね」
「……そっか。あたし初めて知った。一樹の苗字……」
あたしはぐうっと視線を落とした。
「……ミク?」
「その弟くんが、どうかしたの?」
「死んだって言ってるんだ。奏太、一樹が6年前に死んだって……」
「エッ⁉︎」
「死んだ⁉︎」
「あたし訳が分からなくて。もっと聞こう思ったけど、話さないとだめ言われて……」
「「……??」」
「そういえば思い出したんだ。一樹も、前にあたしに言ってた。弟の事、すごく宝物だったって」
「「……へえ、」」
「でも、一樹もう会わないって。それが彼の為だって……」
「「…………」」
「ねえ、あたしさっぱり分からない」
「「……ああ〜、」」
二人はお互い目を合わせる。
何かに気付いた顔をした。
「ん〜、そっかあ〜。そ〜だなあ〜」
「……そうね。いろいろ難しいわね」
「……? どういうこと?」
「……ミク。それはたぶんイツキが……」
「一樹が?」
「記憶操作したのよ。なにか、よっぽどの事情があって……」
「記憶操作?」
……記憶操作……
「……あ、そうか!」
やっとあたしの中の矛盾が片付く。
一樹が記憶操作したから、
だから奏太、一樹が死んだって……
……?
「じゃあ、奏太に教えてあげないと。一樹はまだ死んでないって」
「……っ、ミクっ!」
「それはちょっと!」
二人が慌ててあたしを止めた。