SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……ミクう〜……」
「だから事情があるのよ、一樹くんにも」
「……?」
「家族には家族にしか分からね〜コトがある」
「そうよ、美空が首を突っ込んでいい事じゃないわ!」
「……?」
「イツキの事だ。たぶん考え抜いての行動だったんだ」
「ええ。それに、今さら真実を明かして何になるの。引っかき回すのはよくないわ」
真剣な顔で二人は語った。
「……じゃあ、ほっとけって事?」
「……ン、ああ、」
「……まあ、そうね」
「…………」
あたしは右手を握りしめる。
「だめだ。あたしはほっとけない」
心のままにそう言った。
「……ミクっ!」
「言ったでしょ! これは家族の問題で……」
「ほっとけない! しるしも関われ言ってる! ほら!」
浮かんだしるしを二人に見せる。
「……エ〜っ⁉︎ ウソ〜⁉︎」
「これもお役目だっていうの⁉︎」
驚いたような、困ったような、二人は何とも言えない顔をした。
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"リーン、リーン"
会議室から聞こえるベル音。
「……とにかく、その件はチョイ待ってろミク! しるしサンにもちょ〜っと待ってもらってだなあ〜」
「デリケートな問題なのよ。それとなく私たちが一樹くんに話をしてみるから。ね?」
何度もあたしに釘を刺し、二人はマンションを後にする。
呼び出しを受け、D.S.P本部へ車を走らせた。
「……待ってろ、か……」
一人になったあたしはギュッと右手を握りしめる。
心の中のモヤモヤをハア〜! と外へ吐き出した。
実は、あれから、一時間ほど二人と話した。
黒木とユリが “ 待て ” だの “ ほっとけ ” だの言うたびに、しるしがダメだと反応し……
結局、しるしの意思も踏まえ、とりあえずは様子をみるという事で話はまとまったのだけど、
"ジワ〜ッ"
しるしの反応が止まらない。
早くなんとかしろと言わんばかりに、浮かんでは消えるを繰り返した。
「……もう、デリケートなんだ。待ってるの約束だから、二人が帰って来てから何とかする」
そうしるしに言い聞かせ、あたしは部屋でシャワーを浴びる。
スッキリしない気持ちを洗い流し、早々にベッドに潜り込んだ。