SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇本物と偽物

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久しぶりの幹部の間。

奏太の寝床で、あたしはバッグに入っていた “ パワーカロリー ” を食べている。


「…………」


目の前には何故かソワソワ落ち着かない奏太。


「ねえ奏太。奏太って呼んでもいい?」


「もう呼んでんだろーが」


「だってさっきの、あのお方だから、呼び捨てだめだって」


「そんなん知らねえ。好きに呼べよ」


「分かった。じゃあ奏太って呼ぶね」


「…………」


「奏太、今日学校は?」


「……あ? んなもん真面目に行ってられるか」


「ふうん。さっきの少年たちも行かないの?」


「さあな。おまえこそ学校はどうした」


「うん。寝不足だから休んだ」


「…………」


ちゃんと聞いているのかいないのか、さっきから奏太の目が泳ぐ。


「……ねえ、どうしたの?」


「……あ?」


「なんかソワソワしてるから」


「…………」


困ったように奏太はチラッとこっちを見た。


「おまえが急に来るからだろう、ここへ。こんな昼間に堂々と……」


……?


「奏太、昨日、遊びに来いって言った」


「遊びに来いとは言ってねえぞ!」


「……来ちゃ、だめだったの?」


「……ハア〜、」


やれやれと、奏太は深くため息を吐いた。


「簡単じゃねえって言っただろうが。名の知れたおまえがココに来るのはもう……」


「……どういう事?」


「あのなぁ、仮にもおまえは鬼頭会の女なんだぞ! ココにはたまに大熊組の知り合いも来る。いろいろ都合悪いだろうが。鬼頭会のおまえと後に大熊に行くオレが一緒にいるなど……」


「……そうなの?」


「そうなんだ! おまえの顔と名前はもう大熊にも知れ渡っているんだぞ!」


「……ふうん……」


よく、分からないけど……

あたしはごそごそバックをあさる。
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