SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


〈 “ 何をどう伝えれば良いのか……模索してはみたものの、やはり都合の良い言葉など見つかる筈もなく……。 すみません、結局は混乱を招く事に……” 〉


「…………」


〈 “ このような形で真実を明かす事、そして何故今更そのような事を言うのか……

あなたにとってはどんなに不可解で、不愉快極まりない事でしょう……

矛盾しているようですが、これに関してはわたし自身真意を述べるのが難しく……ただこれだけは…… ” 〉


「…………」


〈 “ 奏太……わたしはあなたに謝らなければなりません。

六年前、わたしは二つの過ちを犯しました。まず一つは自分本位な短絡的思考に陥ってしまった事。

そしてもう一つは家族に……あなたに記憶操作をした事です ” 〉


「…………」


〈 “ 当時、わたしの能力が明るみになり、皆への激しい非難を目の当たりにし、わたしは、自分が消える事で家族の心が癒えるものと……救えると本気で思っていたのです。

これが最善の方法と記憶操作を施し、自分はさっさと行方をくらませました。

その後のあなたたちの暮らしぶりなど知る由もないままに……” 〉


「…………」


〈 “ ですが、わたしはようやく自分の間違いに気付きました。よく思い知ったのです。いかに自分が独りよがりで愚かな人間であったのかを” 〉


「…………」


〈 “ 全てはわたしの責任です。わたしの浅はかな行動が、結局は家族をバラバラに……” 〉


「…………」


〈 “……今更、弁解の余地もありません。謝って許してもらえるとも思っていません。何を言っても腹立たしく聞こえるかもしれませんが……

ただどうしても一言、あなたに謝罪をしたかったのです。

奏太。あなたを騙してきた事、傷付け、苦しめ、一人にさせてしまった事……誠に……誠に申し訳ありませんでした ” 〉


途中、声を震わせながら、一樹は自分の思いを奏太に話した。
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