SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……っ、」


奏太はガクッとうなだれる。


「……んだよ……なんなんだよっ……」


頭をぐしゃぐしゃかき乱した。


"……カランカラン……"
"……ウ〜! ワンワン!"


……えっと……


あたしは少し考える。

“ 一度話せ ” というしるしの言う通り、一樹は奏太と話をした。

なんかスッキリしないけど……

あたしもいっぱい関わったと思うし……

一応、これで役目は終わりって事?


「…………」


あたしは奏太の横顔を見る。

なんとも言えない、複雑そうなその表情……

さっきのリストバンドを握りしめ、じっと下を向いている。

やっぱり何かスッキリしない……


「……奏太?」


とりあえず声をかけてみる。


「ねえ、奏太」


「…………」


「ねえ、奏太!」


「うっせぇ帰れ。一人にしろよ」


不機嫌な声が返された。


「……そう、」


「…………」


「じゃあ、帰るね」


あたしは奏太に背を向ける。


——ガシ!


すかさず右手をつかまれた。


「……?」


「……んだよ、なんで帰んだよ」


「だって奏太が帰れって」


「……マジで帰るかよ、この状況で。ひでえ放置プレイだな」


スネたようにあたしに言う。


「……?」


「……とに訳分かんねぇ、おまえも……なんだよ、アニキと知り合いかよ! なんで早く言わねえ!」


「奏太がいちいち怒るから」


「生きてるなら生きてるって言えよ!」


「言った」


「……っ……くっそ、生きてるって分かったのになんでだよ! おまえはアニキと会ってんのかよ! どこいんだよ! それアニキのジャケットか! どんな関係だよ! ……ちっくしょ、ドロドロにしやがって!!」


……?

なんか奏太の話がまとまってない。
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