SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「えっと、取りあえず、手離して」


あたしは繋がれたままの手を見つめる。


「だめだ！　ぜってぇ離さねえ！」


奏太はギュッとその手に力をこめた。


「おまえ！　離したらオレから逃げる気だろ！」


「……え？」


「アニキと知り合いなんだもんな！　一緒に行方くらませる気か！」


「……どういうこと？」


「冗談じゃねえ！　みすみす手がかり逃してたまるか！」


やっぱりスネたようにあたしを睨んだ。


……えっと……


よく分からないけど、さっきから100％ホンモノ奏太だ。

言葉や態度に幼さが滲み出している。


「べつに、あたし逃げないけど」


「…………」


「でも、早く家に帰りたいんだ。一刻も早く」


「……なんでだ」


「疲れたから、帰って……寝る」


「……っ……おまえっ！　人の気も知らねえで！　よくものん気に寝てられんな！」


「……だって……」


「いいか！　ちゃんと説明してもらうぞ！　アニキは今どこにいて何してんだ！　おまえはアニキのなんなんだ！　ちゃんと答えるまで帰さねえからなっ！！」


「……え、」


すごい勢いで奏太はあたしに詰め寄った。


————それから……


奏太はあたしにいろいろ聞いた。

あたしも奏太にいろいろ話した。

でも、


「……っ……だから！　おまえなに言ってっか分かんねえって！」


やっぱり、あたしの説明は分からないらしく、奏太はしきりに顔をしかめる。

それでも時間が経ってくると、


「……要するに、アニキも正義の味方やってるって事か？」


「うん」


「その、D.S.Pってとこで」


「うん」


「超能力者相手に……」


「うん、そう」


だいたいの大まかな部分だけは、何となくは伝わったようだ。


「……そうかよ……」


奏太はフイッと視線をそらす。


「ほんと、住む世界が違うんだな」


寂しそうにつぶやいた。