SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
黒木は“ウ~ン?” と首をひねる。
「 そのお山の霊気こそが、元来“天狗” の正体であり、その後の天狗伝説の始まりだとするならばーー、」
「 え~っ⁉︎ まてよイツキい~! そう言われてもなあ…… 」
黒木はますます首をひねってしまった。
「 何故、加齢停止の能力が働いたのかは分かりません。 考えられるとするならば、もともとあの天狗が行使していたものが、無意識のうちに美空にも働いてしまった、という所でしょうか 」
三人の視線があたしの方に集中する。
ほうきで床を掃いていたおばさんまであたしを見て“ニマ~” と笑う。
「 一樹、それは映像転送出来ないのか 」
それまで黙っていた一ノ瀬が口を開いた。
「……はい。それが、なにか制限されているようで。あまり口外はするな、という事かもしれません 」
「…………」
一ノ瀬はまた黙り込んでしまう。
「ええ~⁉︎ だってよお~。でもなあ~ 」
黒木はそればかりを繰り返し、
あたしはそんな三人を、人ごとのように、ただぼーっと眺めていた。