SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「そうでもないよ」


おもわずあたしは奏太に言った。


「一樹の言う “ 少し ” はいつも遅いんだ」


「……は?」


「だから、一樹が正しいとは限らない」


「……なに言って……」


「なんで二人ともウソつくの?」


「……ウソ?」


「あたし、前に視たんだ一樹の心。悲しいの気持ち、奏太と全く一緒だった」


「…………」


「どっちも一人になろうとする。一樹、黒木のマンション一緒は住まないどうしても一人になりたがるの気持ち。あたし分からなくて、でも奏太と同じだから分かったの気がした……」


「……おい、」


「会いたいなら会えばいい。一緒にいたいならそうすればいいと思うんだ」


「……はあ?」


「奏太は一樹に会いたいんでしょ?」


「…………」


奏太は少し沈黙する。


「……ハアア〜、」


大きなため息を吐き出した。


「だから、出来ねぇから言ってんだろうが」


「どうして?」


「いろいろ……事情があんだよ」


「だから、どうして?」


「アニキはアニキの考えが、オレはオレの……」


「わからない」


「分かんねぇよ、おまえには。オレには分かるからよ、記憶操作せざる得なかったアニキの気持ちが。オレの為だっていう思いが……」


「…………」


「よっぽど思い詰めてたんだ。たぶんアニキも悩みに悩んで……」


「…………」


「つか、もう考えさせないでくれ。オレん中まだアニキの死んだ記憶が……ゴチャついてマジ気持ちわりい……」


奏太は両手で頭を抱える。


「…………」


ようやく離れた奏太の手。

あたしは右手を握りしめる……
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