SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……なあ、さっきの……がんばったら会えるって、本当にそう思うか?」


「……え?」


「オレなら出来るって……本当にそう思うか?」


……?


「うん。奏太なら出来る。何だって」


「……ふっ、何だってか……」


目を細め、奏太は少し笑ってみせる。


「おまえにそう言われると、本当に何でも出来そうな気がしてくるな」


「あたし、ウソ、言わない」


「そうだな、おまえはウソつかねえもんな」


——スチャ、

奏太は握っていたリストバンドを手首につけた。


「美空、一つ約束してくれるか?」


「……うん?」


「オレはもう何も諦めねえ。ちゃんとケジメつけてくる。そしたら……」


にわかに感じる強い思い……


「おまえが連れて行ってくれるか? オレを、アニキんとこに……」


「……え、」


「会わせて……くれるか?」


「……奏太……」


その瞳はまっすぐあたしに向いている……


「分かった。約束する」


「……ふっ、」


奏太は再び笑みをこぼした。


「……で、どんなん出来るって?」


「……え?」


「アニキの能力だ。もしかして、過去の事とかも分かっちまうのか?」


「……あ〜、うん。それはよく分かる」


「そりゃ〜ヤベえな。オレ相当悪かったし、女関係も……アニキぜってえ怒るな」


……?

よく、分からないけど……

今度は一樹に会う前提で奏太があたしに話してる。


「ルールも何コか破っちまったし……ああ、でもまずはあの事謝んねぇとな」


偽りのないその素顔……

無邪気な顔の裏側に何か大きな覚悟がみえて……

同時に押し寄せる胸騒ぎに、あたしは妙にソワソワしていた……
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